横浜の歴史的建物(旧生糸倉庫)は残せるのか
大変な状況ということで、緊急ミーティングに参加してきた。「旧三井物産横浜支店倉庫」は、歴史的に価値のある建物であるにも関わらず、解体の危機にある。まさしく、所有者の不動産会社が解体工事を着工したタイミングである。時すでに遅しな感じであったが、まだ望みを捨てずに活動されている方々の熱意に心が動かされた。参加者には、文科省のOBの方や横浜市役所のOBの方もいらしていた。また、僕の母校の横浜国立大学建築学科の建築史の元教授であった吉田鋼市先生のお姿もあった。 これだけ多くの方々が熱心に保存の主張をされているにもかかわらず、また将来に残すべき貴重な建物でありながら、なぜこのような展開になってしまっているのか。折しも、歴史的背景の近い富岡製糸工場が世界遺産に選ばれて話題になっていることと対照的で、皮肉でもある。しかも、このような歴史遺産を破壊するニュースは相変わらず後を絶たない。 たいてい、その建物の所有者、事業者が非難を浴びる。たしかに所有者が「残す」と言えば、残される道が開かれる。その一存で決まる。行政のルールで多少縛ることもできるだろうが、日本の司法が私有権の保護に傾倒しているから行政と言えどもそれは現実に難しい。さて、所有者も株式会社であれば、資本主義のルールもある。株主の利益を無視できない。役員会などでの決裁事項を簡単にひっくり返せば、ガバナンスの問題となってしまう。建物保存の問題も、資本主義のことも考えて解決していく必要があると感じている。 今回のケースで言えば、元の所有者(上場企業)が数年前に今の所有者(株式会社)に売買譲渡している。その額は数十億と見積もられる(これは不動産登記簿の抵当権の額を見ればおおむね推測できる)。その額を投資した今の所有者にとって、現状の低利用の状態のまま建物を保有し続けることはあり得ない。それでは、売買時の借入金も返せないと思われる。なので、直球で解体をやめてくれと言ったところで、数十億がかかっているから、なかなか聞いてもらえないのも無理からぬところである。できれば、前の所有者との取引の前に待ったをかけるべきであった。解体工事が始まったからもう遅いのではなく、勝負はとっくの前に決まっていたと言える。
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