大学教育の問題、建築学科で学ぶこと
近くに住んでいながら、あまり足を運ぶことのなかった母校の大学だが、とあるきっかけで、在学中のサークルの先輩が研究教員をやっていることを初めて知り、その研究室を訪問しに行ってきた。ちょうど、卒業を間近に控えた研究生が二人いて、就職のことなど聞いた。ひとりは文化庁に行って歴史建造物の保存活動などをやる予定とのこと。建築史の研究室だから、その就職先は自然な流れと感じた。もうひとりは、大手のハウスメーカーに行くらしい。こっちは歴史とはあまり関係なさそうな世界だが、いろいろ悩んだんだろうなと思った。 ついでに先輩面をして、僕の学生生活と就職活動、それと就職後の転職人生について半生を語らせてもらった。しかし僕は典型的に授業に出ないでバイトとサークル活動に明け暮れたタイプで、実はあまり語る資格はなかったかもしれない。だが、大学で遊び呆けてしまったから、就職してから頑張ったことに関しては自信はある。さて、これから社会人となる学生に何をアドバイスできるかといえば、これも難しい。しいて言えば、いい上司に巡り合うことに尽きる。自分の人生を振り返ってみると、本当にそう思う。もちろん、反面教師のような上司もたくさんいたが。 ところで、建築の教育については、常に考えるところがある。僕が、大学の建築学科を出てから、建築と不動産関連の会社にいくつか勤めて、仕事も幅広くやってきて、さらにMBAも勉強して、その結果しみじみ思うのが、大学で習う内容と実際に世の中で必要とされるスキルとでズレがあるということだ。まず、建築学科ではお金のことは一切教わらない。建築という行為が、何億、何百億円という投資活動であるのに対して、当の建築の専門家を養成する大学で、その経済的な側面について全く教えないのはおかしい。会計学やファイナンスについて、実際の建築プロジェクトに絡めながらちょっとでも教えると、その学生の人生は大きく変わると思う。自分を振り返ってもそう思う。また、人材面で変化すれば、日本の建築や街並みも変わっていくことが期待できる。日本の「ストック活用」がなかなか進まない背景として、この大学教育の問題も関係していると考えている。ストック活用には、建物の経済的な側面にフォーカスしなければ解けない問題が多く絡んでくるからだ。
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