サービス付高齢者住宅は第二の人生のスタンダードとなるか
これまで国土交通省が進める住宅政策と、厚生労働省の福祉政策とで別々に動いていたものを「高齢者の居住の安定確保」について法律が制定され、複数あった高齢者向け住宅の制度が「サービス付高齢者向け住宅」として2011年に一本化された。それからわずか3年余りでサービス付高齢者住宅は5千棟、16万戸を超えた。それでも、全体の住宅数からすると1パーセントにも満たないわずかなものであるが、今後、増えていくことが見込まれる。 サービス付高齢者住宅の特徴は、一般的な賃貸住宅の考え方がベースになっているところにあり、ハード面では一定のバリアフリー基準を満たし、なおかつ最低限の安否確認や生活相談のサービスが受けられることが登録の条件となっている。これをクリアすることで、建設時には補助金が受けられ、固定資産税の減免もある。 今回、横浜駅の近くにある築46年のマンションを改修して高齢者住宅としてオープンすることになり、その運営のコンサルティングがスタートした。ストック活用の観点からすると、高齢者のための住宅は、ニーズの高まる高齢者の住宅需要に対して、既存の建物ストックを転用することで応えていくことが考えられ、これはストックの有効活用そのものである。 また、もうひとつには、既存ストックの所有者である高齢者に自宅からの移転を促し、住宅流通の活性化に寄与してもらう点がある。例えば、おばあちゃんが一人で大きな一軒家に暮らしていて、持て余しているようなケースである。家が広すぎて手入れが回らなかったりする。愛着があって離れられない事情もあるだろうが、ひょっとするともう少し小ぶりなマンションタイプのほうが住みやすいのではないかとも考えられる。一方で、その大きな家は、これから家族が増えるであろうもっと若い夫婦に住んでもらうほうがずっといいかもしれない。簡単に言えば、住まいを入れ替えることだが、これまでおじいちゃんやおばあちゃんが終の棲家として住みたいと思えるような住宅の供給がほとんどなかったから、その入れ替えがあまり進んでいなかった。しかし、それを満たすような住宅が増えることで、状況が変わっていく期待がある。 制度として、安否確認サービスがセットとなっている点も優れている。一般の賃貸アパートなどの大家さんは、高齢の方の入居にはためらいがある。それはやはり安否の問題がある。孤独死などが起こってしまうと、次の賃貸に影響が出てしまう(人が死んだ部屋が貸しづらくなるという現状にも問題があるのだが)。その点がクリアされるのならば、貸す側としても住宅の提供がしやすくなる。これは市場として広がっていくためにとても重要なことだ。市場が広がれば、サービスが多様化し、消費者側にメリットが出てくる。老後に魅力的なライフスタイルが目に見えてくることで、人生そのものの意義が変わってきたりしないだろうか。そういう世の中に早くなってほしいものだ。
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