古い民家や街並みを守るために活動する地域と行政
今、日本各地に古くから残る古民家や武家屋敷、酒蔵などの歴史的建築物は150万棟ほどあるとされるが、その数がこの数年でものすごい勢いで減ってきている。相続等の世代交代のからみもあって、維持保全が難しくなり、解体され続けている。例えば、文京区では過去15年間でその数が実に半減してしまっている。一方で、古民家を利用したカフェやレストラン、ホテルなど、若い層にも人気があり、古い建物を積極的に活用する例も増えている。「東京R不動産」など、レトロな賃貸物件を中心に扱う不動産情報サイトが強い支持を集めている。 「歴史的建築物活用ネットワーク」は、そういった背景を踏まえて、専門家が集まり設立され、制度構築支援や情報提供などの活動を行っている。その第2回会議に参加してきた。会場は有形文化財に指定されている文京区本郷にある求道会館で、まさしく歴史建造物の保存の好例と言える建物で行われた。事例報告としては、愛媛県松山市三津浜地区、富山県射水市、福岡県八女市、兵庫県城崎町、京都市、横浜市での活動内容がスライドで説明された。 事例とは別に、歴史的建築物の保存のための制度についても、行政の担当者が登壇し、議論が交わされた。古い建物の保全で必ずぶち当たるのが、法規制の問題だ。現在の建築基準法は、昭和25年に施行されて以来、常に改正を重ね進化し続けているが、これに照らし合わせようとすると当然に古い基準の時代に建てられた建物が違反になってしまう。このため、法律では「既存不適格」というルールを作り、過去の建物は基準を満たさないが「いちおう合法」というお墨付きを与えた。その代りに増築や改修を行う際は、現行法規に合致させることが求められるという条件付きだ。しかしこれがなかなかハードルが高い。今の耐震基準や防火性能基準を満たすように改良しようとすると、多大な費用が掛かるばかりか、原型を留めないほどに手を加えざるを得ないこともある。例えば、木製の格子戸などが防火性能を満たせないことでアルミサッシに入れ替えなければならなかったりする。これではかつての雰囲気を残すことができない。 それで、今は、歴史的に価値がある建物などについては、法律上の「適用除外」という制度を使って、地域によって独自の基準を定めることができるようになっていて、その最新事例の情報交換がなされた。今、日本で一番進んでいるのは京都市だ。京都市が作成した独自基準は、新たに取り組もうとする地方自治体の模範となっていて、市のホームページでも公開されている。それでもまだ手探り状態というのが本音のようだ。基準の単純な緩和によって安全が軽視されてはならない。かといって保守的に流れては古い建物をそのまま残していく道が閉ざされてしまう。普段は規制をする立場の行政の人たちも、自ら難しい判断をしながら、そういった活動に深く関わっている。こういったことに全く無関心な市町村もまだ多い中、先駆的にやってる人々はえらいと思う。 歴史的建築物活用ネットワーク(HARNET) http://h-ar.net/2015/01/30/harnet_symposium2nd/ 求道会館 http://www.kyudo-kaikan.org/top.html ミツハマル(三津浜地区にぎわい創出事業) http://www.mitsuhamaru.com/ 八女町屋ねっと http://yame-machiya.net/about_machiya.html
>> 活動日記一覧へ >> コンセプト「ストック活用」