IKEA(イケア)でDIY精神を学ぶ
スウェーデンが発祥の世界最大の家具販売店であるイケアは、千葉の船橋に国内1号店を最初に出してからもう9年になる。イケアの店舗に行くと、その巨大さもさることながら、やはり価格の安さに驚かされる。しかも北欧のデザイン思想が取り入れられ、ホームセンターに並ぶ安いだけの家具とは一線を画す。店内にはキッズ用のプレイルームやレストランも併設されていて、さながらレジャー感覚で来る人も多いのではないかと思う。実際に、店内をくまなく回るとすれば、一日では到底足りないほどだ。 その安さを支えているのが、徹底したDIYシステムで、家具類は基本的に「持ち帰り」を想定していて、フラットパックと呼ばれるコンパクトな梱包形状までが緻密にデザインされている。そして、家に持ち帰って自分で組み立てる。組立説明書は、文字がなく、絵だけで表現されているのだが、不思議なことにそれを見るだけで組み立てられるように出来上がっている。世界36か国で展開しているブランドらしく、言語に関してユニバーサルである。商品のピックアップから、運搬、組み立てと、一貫したセルフサービスにつき合うことは楽ではないが、その分安いと思えば納得できるものだ。 さて今回、昭和な木造家屋をDIYでリノベーションしてシェアハウスを作るプロジェクト(ユウトヴィレッジ品川宿)で、共用ダイニングに設置するキッチンで安価でいいものを探していたところ、イケアを思いつき、来店してみると、ちょうどキャンペーンでいいものを見つけることができた。コンロ、水栓、レンジフード、吊収納も全部セットで13万だ。これは飛び抜けて安い。しかし、問題はDIYである。もちろん、配管工事などもあるため、設置工事は業者さんにお願するとしても、部材の選定は自己責任となる。いわゆる「施主支給」ということになるが、これも一種のDIYである。施主支給には責任も伴う。材料の注文ミスは自分らで負わなければならない。 そのため、我々チームは、一級建築士も含めた3人がかりで店頭で商品をくまなくチェックした。まず大事なのが寸法である。実際の現地で大きさ的に納まらなければ意味がない。次には配管の接続方法である。輸入建材で注意が必要なのは、日本のルールにはまらない設備部品の部分で、これが日本の設備業者で対応できる仕様になっていなければならない。もちろん、そんなことはイケアジャパンがチェック済みと思うが、油断が落とし穴になることもある。日本の気候風土や文化への対応度もチェックポイントだ。例えば、「耐震ラッチ」だ。地震で揺れた時に、吊収納から食器が飛び落ちてこないように、扉にロックを掛ける特殊金具だ。国内製品では常識となっているものだが、イケアの標準パーツにはやはり含まれておらず、オプションでの購入となっていた。さすがに耐震ラッチだけはメード・イン・ジャパンだった。 色は自由に組み合わせて選べるのがうれしい。扉は、どれを選ぶか迷うくらいにどれもセンスがいい。扉の握り部分の金具もたくさんの中から選ぶことができる。ただし、その取付の穴は自分であけなければならない。ついでに洗面台も選んだ。これも圧倒的に安い。それにデザインが可愛い。特に水栓金具と照明器具が安い。後日談ではあるが、洗面台の陶器が、梱包材から開けてみると割れていた。返品交換には無条件に応じてくれるのがイケアの特徴のひとつでもあるが、そのために工期が延びてしまったのが痛かった。DIYをやる時にはスケジュールの余裕も必要だ。まずは日本人のせっかちさから改める必要があるのかもしれない。そうやってトラブルすら楽しむくらいの心意気もあったほうがいい。
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