古い一軒家をシェアハウスに改装 PART2 【計画編】
壊せる壁や天井はきれいさっぱりなくしてしまったところで、本格的な設計作業に入った。古い建物なので、耐震壁を増やして、安心して暮らせるように計画しつつ、細かいプランチェックを進める。例えば、収納スペースや水回りの使い勝手などだ。通常の賃貸住宅や分譲マンションの設計では、実際にそこで住んで暮らす人が決まっていないから、一般的な設計基準に照らし合わせながら、細部のチェックを作り込むものだが、ユウトヴィレッジの場合は、「住む人が一緒に作る」ことがコンセプトでもあるから、この設計プロセスでも住まい手が関わってくる。入居予定者も参加しての設計会議では、いろんな意見が出る。住人のひとりは、シェアハウスでの長い生活経験があって、その貴重な体験談をプランに反映させた。また、共用お風呂場へは屋外から行く計画も、この会議により、リビングの奥の壁をぶち抜いて直接行けるようにしたりの大胆な設計変更も行った。こういう変更ができるのも、プランニングの初期段階だからこそ可能となるものだ。 デザイン面では、建物外観をどのようにするかが議論になった。改修工事では、古さを感じる外壁面は、きれいに塗り直したりするのが定番である。今回の改修で、建物を新しいイメージに生まれ変わらせようという考えもあり、壁面に杉板を張って、木の雰囲気を出そうという計画もあった。しかし、実際に工事の見積りをとると、杉板張りは予想以上に高額であった。そんな費用があるなら、インテリアに振り当てたほうが入居者の満足につながると考えて、結局、外観はほとんど今のままとする案に落ち着いた。その代り、リビングに面して大きな窓を確保して、中と外との空間としてのつながりを作ることにした。この大窓が外観の特徴になることも狙った。ならば、一石二鳥である。
ちょうど友人の都内にある実家の古い木造家屋が建て壊しになるという知らせがあり、そのこと自体が惜しまれることではあったのだが、どうせなら建物の一部だけでも保存・活用をしようという話しになった。解体業者の作業が入る直前にトラックを借りて、建具やランプなどを積み出して行った。何に使うか分からない、お茶の木箱や壺なども持ち出した。とにかく、古い記憶を大事にしたいと思った。放っておけば、ただ産業廃棄物として処分されるだけなのだから。期待のガラスの大窓も、いい状態で手に入れることができた。
こうやって、設計図面がまとまり、素材、設備が決まっていくと、正確な工事見積りができる。工事の見積は複数の工事業者に依頼をして、同じ条件で見積りをしてもらい、金額を平等に比較する。これによって正味でもっともリーズナブルな金額の工事会社を選ぶことができる。よくありがちなのは、素材の吟味もせずにいきなり工事見積りを取ろうとする人もいるが、それだと素材などについて見積りをする工事会社任せになってしまい、複数社で見積りを取っても内容がバラバラで比較ができない。それに、自分が好きな素材やデザインを選べなくなってしまう。 工事の見積りをとった後も大事だ。予算と照らし合わせながら、工事費全体の微調整が不可欠だ。再度、見積りの内訳を見ながら、割高な素材や仕様があればそれを見直し、より工事の中身を合理化していく。反対に、もっといい素材を使ってみようという判断も出てくる。そうやって見積りを何度も何度も見直してもらい、納得いく内容と金額をとことん詰めていく。見積りを何度も書き直す業者さんも大変だが、これに付き合ってくれるのはいい業者さんだ。時には業者さんのほうからも安くなる提案をしてくれることがある。こうやって、関係者みんなが知恵を絞っていいものを作り上げていこうとするプロセスが案外大事だったりする。