不動産管理のこれからを考える~HEAD研究会
不動産管理についてのシンポジウムに参加してきた。主催は、最近何かと話題の「リノベーションスクール」を仕掛けているHEAD研究会だ。ここは複数のTF(タスクフォース=部会)があって、その中の「不動産マネジメントTF」のイベントとして全4回シリーズの第一弾という位置付けだ。 HEAD研究会 http://www.head-sos.jp/ パネラーで出演されたのは、これまでの不動産管理のイメージを打破するようなエネルギーに満ち溢れた方々で、プレゼンを聞いているだけでとても心が動かされた。内容として共通していたのは、顧客目線ということだったろうか。不動産管理でいえば、顧客は2つあり、ひとつは賃貸に入居するお客様と、もうひとつは大家さんというお客様だ。そのお客様のことをどれだけ考えてやっているかという点で、口を揃えて従来の管理業に「違和感」を唱えていた。ある意味当たり前のことを追及することで、それに立ち向かう。しかし、その当たり前を貫くのに、結構アイデアや行動力が必要であったりする。言うは易し、なのだ。 不動産のオーナーも、それを利用する人にとっても、管理の役割はとても大きい。管理の担当者の対応如何では、結果が大きく異なる。よくもわるくもなる。一方で、投資により獲得した不動産を利用した「装置産業」でもあり、放っておいても一定の賃料収益が得られなくもない仕組みだ。それを報酬を得て管理をする管理業は、場合によっては「いてもいなくても一緒」のような状況にもなりかねない。そのため、その存在意義が軽んじられる傾向もある。 管理の大事さを考える時に、まずは顧客満足、という視点がある。仮に不動産が完全なる「ハード」であったとしても、それを利用する人にとって、人的な「ソフト」の部分とは一体不可分である。日常的な清掃や建物内で起こる様々なトラブルの対応、最低でも毎月の集金業務もある。例えば、電化製品でも、仮に製品がとても素晴らしくても、故障時のメーカーのコールセンターの対応などが悪い場合は、顧客満足度は地に落ちる。管理の良しあしは、顧客満足の重要なファクターでもあり、賃料を得る対価の一部とも言える。それをきちんとやらなければ、「賃料泥棒」と言われても仕方がない。 もうひとつは資産価値の側面である。不動産の価値評価の手法には様々があるが、現在の主流は収益法である。すなわち、その不動産からどれくらいの収益を生み出せるかで評価する。収益があるから、投資ができる。投資ができてはじめて不動産が存在する。多額の投資をして建物を建てることをする意味はそこにある。収益の中身を分解すると、収入と支出がある。不動産は存在するだけで、最低でも固定資産税がかかり、水光熱費がかかる。時間と共に劣化が起きるから定期的な修繕も必要だし、伸びた雑草を刈ったりもしなければならない。仮に収入がゼロであれば、支出だけとなって収益はマイナスとなる。そんな不動産は「負の資産」となって、持っているだけで損するばかりの金食い虫だ。 オーナーからお金をもらってやる管理業の究極の目的は、この「収益の最大化」にほかならない。収益を高めれば、資産価値も上がり、いざ売却となる場合でもオーナーは困らない。そして、収益の源泉である賃料収入の最大化は、顧客満足とも関係する。顧客満足にハード面とソフト面がある。ソフト面は管理そのものである。ハード面についても、リニューアルなどの提案により管理会社の働きかけで改善していくことは可能だ。そうなるならば、管理会社へのフィーはいくらでも払えるだろう。フィー収入が増えれば、管理会社の経営も安定し、有能な社員を集めやすくなる。そうすることでサービスの質が上がって、さらに物件の収益力が高まる。そういう循環に持っていかなければならない。現状の管理業界は、まだそのレベルに到達していないように思える。残念ながら、シンポジウムではその議論まで至らなかった。次回以降に期待したい。
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