究極のコーポラティブ住宅、経堂の杜
友人が住むコーポラティブ方式で建てられたマンションを見せてもらった。「コーポラティブ方式」とは、一般的な分譲マンションと違って、建物の計画段階から入居者(購入者)を募って、先に住む人を決めてしまう方式だ。それにより自分の部屋のプランや設備などを比較的に自由に注文ができる。一般的なマンションも「青田売り」と言って建物が出来上がる前に売買契約を結ぶが、その時点では設計は完了しており、多少のカラーのセレクトや設備機器のオプションを選んだりができるが、コーポラティブの場合は、さらに踏み込んだ自由設計ができる。 もちろん、集合住宅であるため、個人の要望がすべて通るわけではなく、委託を受けたコーディネイト会社が利害を調整し、全体の調和を図る。僕もデベロッパーや設計の仕事をしていたので、この調整業務の困難さは容易に想像できる。コーポラティブハウスの成否は、このコーディネイト会社の企画力、技術力、マネジメント能力に大きく左右するであろう。 コーポラティブのもうひとつの良さは、住む人が先に決まって、建設組合を作り、実際に住み始めるまでに住民同士の十分なコミュニケーションができ上っているという点にもある。通常の分譲マンションでは、引越しをして最初の管理組合総会などで隣人と初めて顔を合わせるということが当たり前だが、コーポラティブではそうではない。同じ建物を共有して住むので、マンションのほかの住民の存在は、実は大きい。どんな住民がいるのか、これがマンションを買う最大のリスク要因であることもある。マンションの組合問題、隣人問題は、こじれると深刻になるケースも多い。コーポラティブ方式でも、蓋を開けてみないと分からない状況には変わりがないかもしれないが、少なくともコーポラティブハウスのような「こだわり」のライフスタイルを選んだ価値観の近しい者同士である可能性が高い。これによって、合意形成が図りやすくなることが想像できる。もちろんこだわりが強すぎて協調性がない人がいる可能性も否定できないが・・・ さて、この「経堂の杜」は、そんなコーポラティブハウスの成功事例、先進事例として、業界内でも有名な物件である。建物の構造としてもスケルトンの思想が徹底していて、なおかつ、借地権であるが、将来的な売却時にはその残存価値に応じて地主が買い取ってくれるオプション付(リースバック方式=買取後は賃貸借として賃料を払って住み続けることもできる)だ。契約書にはその計算式が複雑ではあるが明確に定められている。借地期間は50年だから、その50年後以降のことまで真剣に考えている証拠である。建物の平均寿命が30年前後と言われる日本において、傑出したビジョンを持った素晴らしい建物だと思う。写真のように緑が浸食されたような外観が素敵でもある。これでも、最近の大規模改修で木を短く刈り込んだ後だというのだから、すごい。
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