葉山のスケルトンハウス
「スケルトン」とは建物の構造体など基本的な部分のみの状態を差し、マンションで言えばコンクリートがむき出しでフローリングや壁紙などが仕上がっていない状態をイメージすると分かりやすい。これに対して「インフィル」はスケルトン以外の仕上げや設備機器などの部分を指す。通常、新築マンションを買えば、スケルトンに加えてインフィルまで仕上がった「完成形」の状態で引き渡しを受ける。海外ではスケルトンの状態で売買され、購入者が自分でインフィル工事を手配して仕上げをすることが一般的な国もある。日本では法規制の問題があって、なかなかこうはいかない。しかし、中古物件の取引においてはあり得る方式だ。中古マンションを買ってリフォームやリノベーションする時に一度スケルトン状態にしてから、新しく壁を作ったり、浴室やキッチンなどの水回りを施したりする。いわば、建物の「リセット」である。そのほうが自由にカスタマイズしやすい。今後、このような住居のカスタマイズは増えていく傾向なので、「スケルトン」という言葉もよく聞かれるようになっていくかもしれない。
さて、今回見てきたのは木造戸建てのスケルトン方式というから、珍しいと思った。スケルトンといえば、鉄筋コンクリート造のマンションのイメージが強かった。行ってみて話を聞いてみると、まだ試行錯誤段階ということだった。木造の場合、スケルトンとインフィルと区別がむずかしくなる。先ほどの法規制の問題もある。区別が明確にできないと、販売時のトラブルになりやすい。こうなると、下手をするとメリットがデメリットになっていまう。説明では「スケルトンの思想をまず取り入れた」ということだった。
「スケルトンの思想」に僕の関心が向いた。その思想の核心は建物の長寿命化だ。家は一生の中でも高額な買い物だ。だから、長持ちしてもらうに越したことはない。しかし、実際に長く住んでいるとライフスタイルが変わり、家族構成が変わり、設備機器に新しいものが出てきたりなどが起こる。建物も時代に応じて変化していくことが求められる。スケルトンの発想では、この変化対応をインフィル部分でしていってもらい、時代の変化に大きく左右されないスケルトン部分は、その代わりに長寿命な材料などを使う。大事なのは、インフィルの更新がしやすいような全体の設計を施すことである。これが、長期において資産価値の落ちないスケルトン住宅だ。逆に言うと、日本の多くの住宅がこの思想に基づいて建てられていない。だから、スクラップアンドビルドがなかなか減らないのだろう。スケルトン住宅がこれからもっと増えていってもいい。
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