リアル出店の進化形、「マイクロリーシング」とは?
浜松で面白い取り組みをやっている若い建築家がいて、詳しく案内してもらった。衰退傾向にある中心市街地の古い雑居ビルをどうやって利用するのがいいのか、デザインだけでなく、そのビジネスモデルまで考えているようだ。よくある事務所利用のパターンとして「シェア」がある。先例として、ひとつのテナント区画を複数の事業者で利用するシェアオフィスがあるし、この住居版はシェアハウスとなる。今やネット環境とPCさえあれば、十分に仕事ができるから、何十坪ものスペースはいらないし、コピー機なども共同利用でよい。 この発想をさらに進化させたのが、彼が考える「マイクロリーシング」だ。どうマイクロなのかというと、なんと10cm×10cm単位で「スペース」を借りることができるのだ。10センチで何をするかといえば、例えばアクセサリーなどのディスプレイとして利用ができる。時計くらいを飾るならちょうどいいスペースだ。もちろん、10個でも20個でも借りていい。ここでは、そのままそれら商品を買うこともできる。出品者の代わりに、ここの運営スタッフが決裁も代行してくれる。スペースだけでなく、販売員のシェアにもなっていると言える。ネット販売などをやっている事業者がリアル店舗を実験的に試したいといったニーズと合致するのではないだろうか。まだ、採算ベースまでには至っていないようだが、こういった発想には可能性を感じる。 こういう仕掛けを建築家がやっていることも面白いと思った。建築家というよりもマーケターに近い。もともと建築のスキルは広告のスキルに通じるものがある。建築のデザインの役割として人を魅了することがあって、ファサードや空間作りにおいてもそれが求められる。建築家は時として看板などのサイングラフィックも手掛ける。ここにくると広告の領域と完全に重なってくる。また、建築家には、人々の動線やゾーニングなど、人間中心の考え方が職能として身についている。これをもう一歩進めれば、マーケティングの基本である顧客思考に発展させることが自然にできる。あとは、ちょっとした金の計算ができれば、事業プランくらいすぐに作成できるようになる。そういうハイブリッドな人材がこれから増えてきて、あちこちの街を変えていくのだろうと思った。 KAGIYAビル https://www.facebook.com/kagiyabldg
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