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鉄筋コンクリート造の建物はファイナンスで寿命100年超えられる


築年数の経った建物のコンサルティングをやっていると、必ずと言っていいほど、「そもそもコンクリートの建物は何年もつものなのですか?」というご質問をうける。とても大事な質問だ。街を見渡すと、まだ20~30年ほどしか経っていないような建物でも、次々に取り壊され、また新しい建物が建てられている。50年を超えるようなビルは、もうボロボロのヨボヨボというイメージだ。そうすると、せいぜいそれくらいが建物の寿命なのかと考えてしまう。築29年で解体された赤坂プリンスの記憶も新しい。解体の理由は「老朽化」とされた。日本の近代高層建築の幕開けを象徴する霞が関ビルでさえ、まだ築48年でしかない。国内最古の分譲マンションと言われる宮益坂ビルディングは築63年だった(これも解体が決定)。ニューヨークのエンパイア―ステートビルが築85年で今も健在なのに対して、日本では長生きしている建物のサンプルがそもそも少ない 日本の建物の寿命が短いのは「人災」 地震が多いから、湿気が多いから、と日本の建物の寿命が短い理由がいくつか挙げられる。いずれも自然現象だから仕方がないとでもいうようなニュアンスだが、私はそうではないと思っている。建物の「寿命」と表現すると、あたかも人間が死んでいくみたいに自然に息を引き取るかのようなイメージがあるが、実際に建物の場合は、人間がその解体を決めて、人間の手で壊されているのだから、いわば「殺されている」のである。その意味では、日本の建物の寿命が短いのは、「人災」と言える。 コンクリートそのものの寿命は? さて今、当社では築45年のマンションの全フロアリノベーションのプロジェクトをやっているが、この計画段階でも同じことをクライアントと議論した。改修投資に億単位のコストがかかるが、投資の利回りは悪くない。しかしそれも、建物が使い続けられるという前提があってのこと。具体的な検討としては、耐震診断を進めながら、コンクリートの「中性化試験」を実施し、建物寿命を推計した。建物というものは個々のパーツの集合体である。コンクリート躯体のほか、配管設備や機器類があり、内装材などがある。それらにひとつひとつ寿命があって、そのサイクルも異なるが、パーツの寿命が切れれば、新しくリプレイス(更新)すればいい。ただし、更新が容易でないものもある。コンクリートの柱や梁がその一例である。更新したい部品が製造中止となっていて更新できないということもある。それはたいてい設備機器の場合だが、その場合はシステムごとの更新となり費用が膨大になり、断念せざるを得ないケースも多い。寿命がきて機能しない設備があると建物としてもたいてい使い物にならなくなる。そうすると建替えるしかない。そうやって、建物の寿命は個々のパーツの寿命で決まる。今回の建物の場合は、内装と設備系はすべてリプレイスするので、最終的に寿命を決めるのはコンクリートの部分となるが、その中性化試験の結果、あと70年くらいの寿命があることが分かった。そうすると、トータルで100年を超えることになる。これでいくと、国内で事例がないレベルの長寿命となる。もちろん、どの建物でも同じような結果が出るとは限らない。当時の施工状況や立地条件などで異なるだろう。

銀行融資をどう乗り切るか? さらには、もうひとつ問題があった。改修資金の融資の問題だ。幸い、どの銀行も土地の評価分の融資は可能だったが、返済期間の条件が5年~10年と短かった。銀行曰く、コンクリート造建物の耐用年数47年(税法で定められるもの)をもうほとんど過ぎてしまっているからと。銀行の言い分も分かる。寿命が尽きる建物の特に収益物件で長期返済は期待できないということだ。しかし、実際はもっと寿命が長いのだから、中性化試験結果と合わせてそのことを主張し、それであればということで、30年返済まで可能となった。最終的には25年を選択したが、これで毎月のキャッシュフローに余裕が出て、計画の自由度が高まった。建て替えか改修して存続かの検討も行ったが、このキャッシュフローの違いは大きかった。残念なことは、こういう考え方をとれる銀行がまだ少ないということだ。ファイナンスがうまくいけば、今回のケースのように取り壊しにならずストック活用ができる建物ももっと増えていくことだろう

劣化した設備配管は更新することで建物そのものの寿命を延ばすことができる

コンクリートの断片を現場で抜き取り、試験によりコンクリートの寿命を推測できる

 コンサルティング事例 
どうすればいいのか分からない

自宅や賃貸アパート、ビルなど建物(不動産)もはじめの頃は問題があまりなかったものの、年が経つごとに次第に悩みが多かれ少なかれ生じてきます。気が付くと問題が山積みになっているというようなこともしばしば見受けられます。特に古い建物になればなるほど、そういった傾向が目立ってきます。

古い建物に共通する問題

  • 経年劣化による不具合の問題

  ……漏水、設備故障、ひび割れ、傾きなど

  • 建てた(買った)時からの時代の変化によるミスマッチ

  ……家族構成・勤務先・収入等の変化、時代遅れの設備・耐震・断熱性能など

  • 建物とともにオーナーも歳をとることでの問題

  ……定年退職、気力の低下、親の相続、自分の相続

ある築年数でこれらの問題が一度に押し寄せるため、「どこから手をつけていいのか分からない」という状況に陥りがちです。しかし、複雑に見えることでも冷静に整理すれば、たいてい不動産に関する問題解決のパターンとして大きく以下の5つが考えられるものです。

<問題解決のパターン>
1. 売る
2. 貸す
3. 建替える
4. 使い続ける
5. 上記の組合せ

AIRYFLOWのコンサルティングでは、これらの選択肢を洗い出すところからスタートし、それらを中立客観的にかつ長期的な視点で比較検討して具体的なアクションまでサポートします。

納得できる解決方法が見つかります。
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